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雑談掲示板
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■:
高道くるみ
[2025-12-09 15:38:18]
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1:
高道くるみ
[2025-12-09 15:38:50]
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1話
朝だ。今日は彼女の美咲とデートの日。待ち合わせ場所は遊園地。
ついた。美咲はまだ来ていないようだ。近くのコンビニでもいこう。美咲が好きそうなアイスを買うとでもしよう。コンビニを出た。美咲がきた。「ねぇもう少し早くしてくれる?」
その一言は胸につき刺さりその後別れた。「もし、心が読めたならよかったのに。」美咲の後ろ姿が小さくなっていくのを見つめながら、僕は立ち尽くしていた。手には、溶け始めたイチゴミルク味のアイスクリーム。美咲が好きだと思って買ったものだ。結局、渡すことはなかった。
「もう少し早くしてくれる?」
あの時の美咲の声は、いつもの明るいトーンではなく、少しだけ苛立ちを含んでいたように思う。付き合って一年。遅刻はいつものことだったし、美咲も笑って許してくれていたはずだ。なのに今日は違った。
もし、本当に心が読めたなら。
僕は急いでスマートフォンを取り出し、美咲にメッセージを送った。「ごめん、話がしたい。どこにいる?」既読はついたが、返信はない。
コンビニの前に置かれたベンチに座り、僕は深くため息をついた。あの時、美咲は何を考えていたのだろう。僕の遅刻に心底うんざりしていたのか、それとも何か別の、僕には想像もつかないような理由があったのか。
数時間後、諦めかけていた僕のスマホが震えた。
「ごめん。今日はもう帰る。また連絡する。」
それだけ。まるで僕との関係に終止符を打つかのような、冷たいメッセージだった。
僕は美咲の心が知りたかった。知って、もし僕が悪かったのなら謝りたかった。もし美咲に何か悩みがあるのなら、聞いてあげたかった。
翌日、僕は美咲の家の前で待ち伏せをした。僕を見つけた美咲は、昨日とは打って変わって、驚きと少しの困惑の表情を浮かべた。
「あのね、昨日……」
僕が話し始めようとすると、美咲は僕の言葉を遮った。
「昨日、お母さんから電話があったの。お父さんとお母さん、離婚するんだって。お父さんが浮気してて、それがずっと許せなかったみたい。」
僕は言葉を失った。僕の遅刻なんて、美咲の抱えていた大きな悩みに比べたら、ちっぽけなことだったんだ。
「で、でも、なんでそんな時にデートに…」
「気を紛らわせたかったの。あなたに会えば、少しは忘れられると思った。でも、会ったら急に全部が嫌になっちゃって。あなたには関係ないのに、ごめんね。」
美咲の瞳から涙が溢れ出した。僕は何も言わず、美咲をそっと抱きしめた。
もし、心が読めたなら。美咲がどれだけ辛い思いをしていたか、すぐに気づいてあげられただろう。僕の遅刻を責める前に、美咲の心の痛みに寄り添うことができただろう。
僕たちは別れることはなかった。むしろ、この出来事をきっかけに、お互いの心に寄り添い、支え合うことを学んだ。言葉だけでは伝わらない、心の奥底にある思いを大切にしようと誓った。
もし、心が読めたなら、世界はもっとシンプルになるだろうか。いや、きっとそうじゃない。言葉を尽くし、相手の心に耳を傾ける努力こそが、人と人とを繋ぐ大切なものなんだと、僕は知った。
2:
高道くるみ
[2025-12-09 15:40:34]
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2 話
あれから、僕と彼女の美咲の関係は、より深く、確かなものになった。あの日の涙と告白は、僕らが互いの心に真剣に向き合うための、痛みを伴う重要なステップだったのだ。僕は、美咲の抱えていた苦悩を理解し、彼女は僕の誠意を受け入れてくれた。僕たちは、言葉の限界と、それでも言葉を尽くすことの大切さを学んだ。
その日も、いつもと変わらない週末が始まろうとしていた。今日は、僕の提案で少し遠出をして、海を見に行くことになっていた。今度こそ遅刻はしないようにと、僕は待ち合わせ時間の30分前には駅のホームに立っていた。美咲は時間ちょうどに、穏やかな表情で現れた。
「待った?」
「ううん、今来たところ。行こうか」
電車に揺られながら、他愛もない話をした。天気のこと、最近読んだ本のこと、大学の講義のこと。美咲は時折、車窓の外を眺めながら、ふっと笑みをこぼす。その横顔を見て、僕は昨日の自分とは違う、成長した自分を感じていた。心が読めなくても、彼女の今の幸せな気持ちは、僕に伝わってきていた。
海に着くと、潮の香りが僕らを包み込んだ。きらきらと光る水面が眩しい。僕たちは砂浜を歩きながら、改めてゆっくりと話をすることにした。
「最近、お父さんとお母さんとはどう?」僕は少しだけ勇気を出して尋ねた。
美咲は、少しだけ遠くを見つめて答えた。「うん、少しずつ前向きに話し合ってるみたい。すぐに解決するわけじゃないけど、ちゃんと向き合うことが大事なんだって、私が学んだから」
彼女の言葉に、僕は胸が熱くなった。僕らが経験したことは、彼女自身の家族にも良い影響を与えていたようだ。
「もしあの時、僕がすぐに君の異変に気づけていたら…」
僕が言いかけると、美咲は僕の手を握って首を横に振った。「違うよ。あの時、あなたが私の前で立ち尽くしてくれたから、私は自分の心と向き合えたの。もし心が読めたとしても、きっと私はその事実に甘えて、自分の言葉で想いを伝えようとしなかったかもしれない」
僕らは、互いの目を真っ直ぐに見つめ合った。心が読めなくても、相手を思いやる気持ち、そして言葉にすることへの努力が、どれほど大切かを再確認した瞬間だった。
「ねえ、もしまた私が何か悩みを抱えたら、言葉がなくても気づいてくれる?」美咲がいたずらっぽく笑って尋ねた。
僕は強く頷いた。「当たり前だろ。僕らはもう、言葉の向こう側にある心を感じ取る方法を学んだんだから」
言葉は不完全かもしれない。けれど、その不完全さがあるからこそ、僕たちは互いに歩み寄り、理解しようと努力する。もし心が読めたなら、世界は確かにシンプルかもしれない。でも、言葉を尽くし、時にはぶつかり、そして深く理解し合うという、この複雑で美しいプロセスは存在しないだろう。
僕の手にある、今度はちゃんと渡せたイチゴミルク味のアイスキャンディーが、少しずつ溶け始めている。でも、僕の心は昨日よりもずっと温かかった。僕たちはこれからも、言葉という架け橋を渡り続け、互いの心に寄り添っていくのだろう
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