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怖い話/14



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■: Ghost Finder ThomasCarnacki
[2023-09-30 20:55:22] [×]
光夜(ひかや)輝夜(かぐや)は母親の実家がある土地に来ていた。
 別に好きで来たわけではない。祖母が大腿骨を折り入院したため見舞いにきたのだ。ずっと病室にいるのも飽きてきたため母親たちに声を掛けて部屋を出た。病院は好きではない。
 輝夜には昔から化け物が見えた。それは学校や病院に多くいるのだ。経験則から何も見えていないふりをしていればいいことはわかっている。知らんぷりをするのは得意だった。

輝夜が辿り着いたのは病院の裏にある小さな丘だった。もう夕方に差し掛かるためだろうか周囲には人っ子一人もいない。焼け爛れたような赤い空だ。その光は輝夜も家々も飲み込んでいく。秋風が輝夜の身体を通り過ぎ、羽織るものでも持ってくればよかったと後悔していた。
 丘から民家を見下ろす。家々から夕飯の魚を焼く匂いやカレーの匂いが漂った。テレビの音が漏れ聴こえる家には耳が遠い老人が住んでいるのかもしれない。自身が見られることは嫌いであったが、逆に人をひっそりと観察することは好きだった。

その歌は破れ屋としか思えない家から聴こえた。輝夜がこの丘に来る途中、嫌な雰囲気がして前を通らないようにわざわざ迂回した家だ。変声期も経ていない子どもの柔らかい声はその家には些か不釣り合いのように思えた。その家は竹垣で高く囲まれていたが輝夜のいる場所からは中を見ることができた。その家の中がよく見える位置に移動する。
 覗き見て、思わず悲鳴をあげそうになる。震える手で咄嗟に口を覆った。唇が強張る。氷水に飛び込んだかのように全身の毛が逆立っている。

 それは人の形をしている。しかし自分と同じ人間だとは到底思うことができなかった。黒く長い髪は逆立ち、重力に逆らう。その体は幾つにも分断され、断面が生々しく晒されていた。動きは操り人形のようにぎこちなく、時折詰まった様に体を止める。そして一瞬のうちに別の場所に移動するのだ。化け物だ。今まで見た中で最も恐ろしい姿をしている。

 逃げないとと脳は体に信号を出すが、切っ先を当てられたように身動きさえできない。呼吸が浅くなる。

 それは破れ屋の中庭にいる別の化け物を嬲っている。手に持つ刀で斬り付け串刺しにすると、倒れたそれがただの肉片と血の海になるまでその刀を振り下ろし続けた。池に溜まっていた雨水に肉片から流れ出した血が混じる。

 見つめすぎた。化け物と目が合ってそのことに気がついた。青白い肌。その表情は怒りに満ちている。自身の顔が蒼白になるのがわかる。助けを呼ぼうにも声は出ず、膝は小刻みに震えた。


「――ねえもうかえっていい?」


 繰り返し聴こえていた歌が止み、その声の主と思われる子どもが輝夜の視界に現れた。輝夜からは陰になって見えない竹垣の近くにいたようだ。その子どもは化け物に近づく。止まってや逃げてなどの声を出そうとするが恐怖で喉がカラカラに乾いていた。その間も化け物は輝夜から視線を外そうとしない。

 化け物の視線を辿ったのか子どもも輝夜の方に視線を遣る。今度は子どもと目があう。子どもは首を傾げるが輝夜にはその仕草がひどく不気味に見えた。

 やがて興味を無くしたのか子どもは輝夜に手をひらひらと軽く振ると傍にいた化け物と共に闇に飲まれていった。


1: たいたこはげ 
[2023-09-30 21:16:16] [×]
名前いくつあるんですか?おぉん?


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